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彼は11歳。母親は彼を産んですぐにこの世から去り、この日まで父親だけと一緒に暮らしていた。しかし彼は[母がいなくても父がいるから寂しくない]と言い、父親によく懐いき、父親を好いていた。
『ケンコウシンダン?』
ある日彼は突然、父親に連れられて『健康診断』の為に病院ヘ行った。
辿り着いた病院は町外れの森の近くにあり、異常な程広く薄暗かった。
病院の中に入っても受け付けの人以外は誰も見当たらない。
彼は不安な気持ちでいっぱいになるが、父親を信じ[お父さんがいるから大丈夫!]と心の中でそう言った。
『宜しくお願いします。』
受け付けが終わってすぐに彼は診断室へと案内された。
中には白衣を着た、短い髭をはやした男が座っていた。
いきなり注射を用意され、少し彼は驚いたが、コレに耐えたら父親に褒めてもらえる。という思いがあったので痛みを堪えて大人しくしていた。
『いっ…。』
予想以上に痛みが強く彼は涙を流した。しかし彼はとても我慢強く、泣き叫んだり逃げ出したりはしなかった。
注射が終わり何故かだんだんと眠くなっていく。思わず彼は父親に褒めてもらう前に眠りについてしまった。
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