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さわ、と足元の草が音を立てた。
レピスが一歩進むたび、セピアが一歩進むたび。
時折、風が吹くとその音は連続して、耳に届く。
――まるで漣みたいだ。
以前、レピスがそう呟いていたのを、セピアは思い出す。
――サザナミって、何?
その時セピアは訊ねたが、少年は、どこか寂しげな笑みを浮かべるだけで、何も答えてはくれなかった。
きっと、さわさわと鳴るこの音が、セピアの知らない何かとそっくりなのだろう。
「サザナミの音……か」
セピアのその小さな呟きは、風に攫われ、見えない波の中に消えてしまった。
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