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淡い緑に覆われた、優しい大地、クライサス。
ほんの小さな島だけど、けれどそれが僕と、この世界の全てだった。
周りに「海」と呼ばれるものはなく、ただぽっかりと、何もない空間に、この大地は浮いている。
島の中央から涌き出る水は幾つもの流れを形成し、大地を十分に潤したあと、この島の端っこ――つまり、大地の終わりの、岩が剥き出しになった断崖から無の空間へと、流れ落ちていくんだ。
その水がそれから何処へ行って、どうなるのかは、誰も知らない。
もちろん僕だって知らないけれど、水の行方なんて、今まで一度も調べようと思ったことは無かったし、これからも調べるつもりはない。
そんなことを知らなくたって世界は廻り、月日も廻っているんだから。
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