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悪夢のようなあの夜から、身の回りで不思議な事が起こり始めた。
事の起こりは、お葬式の朝。
みんなは朝食を摂りに別室にいた。
線香を絶やしてはいけないという事で、あたしが残って線香を見ていた。
するとどこからかイビキが聞こえて来た。
『親戚のおじさんかな?』
始めはそう思った。
しかしすぐに気付く。
この部屋にはあたし以外誰もいないのだ。
部屋中見て回った。
といっても影になるような場所もない部屋だ。
誰もいない事位、簡単にわかった。
音の方向を辿る。
遺影の裏。
…そう、棺の方から聞こえて来たのだ。
確かに寝不足だったが、意識ははっきりしていた。
聞き間違いなんかじゃない。
もちろん気が触れていたわけでもない。
『生きてるんだ!』
本気でそう思った。
今になって考えてみれば、そんな事あるわけがない。
でも当時中学生の、その上まだ死を受け入れられなかったあたしは本気でそう思ったのだ。
みんなの所へ走った。
開口一番
『お父さんが生きてる』
そう言った。
もちろん誰も相手にはしてくれなかった。
今あった出来事を話すと、叔父だけが見に来てくれた。
もうイビキは聞こえなかった。
でも確かに聞いたのだ。
間違いなく、この耳で。
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