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呼び声
段差が分からぬ階段を踏み締めながら目的地を目指して細道を行く。
目の前にはキッサキジムが見え、その辺りはやや広くなっているため、子供たちの遊ぶ姿が見受けられる。雪だるまをポケモンと一緒に作る子もいれば雪合戦をしているのか、追いかけ回して雪をぶつけようとする子達もいる。
「子供は無邪気だな」
穏やかな日常に心を和ませながらゲンはルカリオに話掛けた。
『そうですね…いつか彼らもパートナーと共に旅に出る時が来るんでしょうね。』
「そうだな、近い未来かもしれないな」
止めていた歩みを再び進めようとするも、不意に背後に衝撃を感じ振り返りみれば、先ほど追いかけられていた少年がゲンにぶつかり尻餅をついていた。
「君大丈夫かい?」
転んでしまった少年に手を伸ばすと、素直に小さな手がゲンの手を取り立ち上がり、
「ありがとう…お兄ちゃん…あっルカリオだ!お兄ちゃんもしかしてポケモントレーナー?!」
「そうだよ」
隣りに居たルカリオを見るや否や、焦点はそちらに移りゲンの返答を聞いているのか、いないのか興味津々にルカリオの周りを回りだす。かと思えば、恐る恐るふかふかな手に人差し指で突ついたりしし次第に手を握り始める。
『マッ…マスター』
慣れない子供の様子にと惑いを隠せず、主に助けを求めるが笑みを浮かべる瞳はそれを許さず楽しんでいるように見えたため渋々ルカリオは制止を選ぶ。
「ねぇ…ルカリオのお兄ちゃん、もしかしてキッサキの神殿にいる凄いポケモン捕まえに来たの?」
「凄いポケモン?……」
子供に対し否定の言葉を言おうとした瞬間。
―ドックン…―
ジム裏手の神殿から大気が脈打つのを感じ、自ずとキッサキの神殿へ顔が向く。まるで何かと共鳴しあうような大きな鼓動。
―集エ…我ノ元二…ワレノ…―
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