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少女は脅え、震えている。
兵士「さぁ、その娘を渡せ!」
セシル「断る!」
セシルはそう言い放つと、剣を抜いて身構えた。
兵士「き、貴様!……かかれっ!」
その合図で一斉に兵士達が襲いかかる。
セシル「何があっても……この子だけは絶対渡さん!」
少女「………」
少女はセシルの戦う様子を眺めていた。
兵士「う……た、退却だ!」
兵士達は引いていった。
セシルは剣を収め、少女に近寄る。
セシル「大丈夫だったかい?」
少女「……ごめんなさい、あたしのせいで……」
セシル「謝るのは僕のほうだ。
それも謝って済むような事じゃない……」
少女「でも……守ってくれた。」
そう言うと初めてセシルの目を見た。
少女「あたし……リディア。」
セシルは名前を教えてくれ、とても嬉しかった。
セシル「ありがとう……リディア。」
セシルは笑顔で返した。
翌朝二人は支度を済ませ、宿を出た。
セシル「さて……どうしようか。」
セシルはこれからの事を思い、しばし考え込む。
リディアを見ると、セシルの左手を握りながらこちらに寄り添っている。
ふいにリディアと目が合い、可憐な笑顔が向けられる。
その笑顔に思わずセシルも笑顔がこぼれる。
(この子の笑顔をこれ以上消させはしない!
とりあえず追っ手から逃げなければ……)
すると何やら村人の話しが聞こえてきた。
「おい。今朝、入口でよ!」
「あぁ、オレも見たぜ。なんたって飛びっきり綺麗なネェちゃんだったからなぁ。」
「入口で倒れててえれぇびっくりしたなぁ。そこの家に担ぎ込まれたらしいが……
なんでもバロンから来たみたいな事言っていたらしいぜ。」
セシル「なんだって!?」
セシルは村人達に詰め寄る。
セシル「その女性はどこに運ばれたんですか!」
「あ、あぁすぐその角を曲がった家だよ。どうしたんだいいきなり?」
村人達はセシルの鬼々迫る形相に一瞬たじろぐが、2、3m先の通りを指差した。
セシルは村人に礼を言うと、指差した通りへと歩きだす。
リディア「どうしたのお兄ちゃん……?」
リディアは手を引かれながら尋ねるが声は返ってこない。
(まさか!……ローザか。)
担ぎ込まれたと言う家に着き、ドアをノックする。
すると一人の老婆が出てきた。
老婆「はい?」
セシル「ここにバロンから来たと言う女性を運んだと聞いたのですが!?」
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