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老婆「えぇ、村の前で倒れていたので運び込みましたよ。
可哀想に……高熱病にやられたんだろうねぇ。
うわ言でセシル…セシル……と繰り返すだけで。」
セシル「やはり!御婦人、僕がセシルです!」
老婆「まぁ、早くお入り!奥の部屋よ。」
セシル達は老婆に招き入れられ、奥の部屋に入った。
するとベッドの側に老婆の旦那と思われる老人が腰掛けていた。
ベッドに倒れている女性の顔を見ると……
セシル「ローザ!」
セシルはベッドに駆け寄る。
セシル「ローザ……」
ローザの顔を見ると赤く熱り、汗で長い髪を張り付かせ、苦悶の表情を浮かべていた。
ローザ「……う…うん……セシル…死なないでセシル!……」
すると側にいた老人が話しかけてきた。
老人「うわ言でずっとお主を呼んでおったよ。
彼女は恋人かの?」
セシル「……大切な人です。」
老人は側にある本棚から一冊の本を取り出した。
あるページを開き、セシルに手渡した。
老人「高熱病を治すには、幻の宝石
《砂漠の光》が必要なんじゃが、
《アントリオン》と言う魔物が棲む洞窟にあるんじゃ……」
セシル「その洞窟はどこに?」
老人「このダムシアン砂漠を北東に抜けると山々の間に地下水脈が流れておっての、
その水脈を抜けると砂都
そのダムシアンをさらに東へ進んだ孤島にあると聞いたが……」
セシル「わかりました。」
セシルはそう言うとローザの頬に軽く手を添える。
セシル「ローザ……しばらく待っていてくれ。僕が必ず……」
老人「行くんじゃな。」
セシル「はい。すいませんがもうしばらく、ローザをお願いします。」
セシルは老人に深々ど頭を下げた。
リディア「お兄ちゃんの大切な人なの?」
セシル「あぁ、すまないがリディアもここで待っていてくれないか?」
リディア「いや!リディアも一緒に行く!
今度はリディアがお兄ちゃんを……
お兄ちゃんの大切なこのお姉ちゃんを助ける。」
セシルは戸惑ったが、リディアの瞳を見てその決意が堅い事がわかった。
セシル「……わかった。何があっても君を守るよ。」
老人「気をつけろ。水脈には最近、八匹の水蛇が出るそうじゃ。」
セシル達は部屋を出て、老婆にも深々と頭を下げ家を後にした。
(すまないローザ……ミストの村の崩落を聞き僕を追って来たんだ……僕の命に変えても君を救う!)
セシルとリディアはカイポを後にし、北東へ歩みはじめた……
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