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セシルは謁見の間を後にしようとするが、立ち止まり、意を決したような表情で玉座の前まで引き返す。
セシル「陛下!陛下は一体どういうおつもりです?
皆今回の命令には不審を抱いております……」
王「……お前をはじめとしてか?」
セシルは、そう言うバロン王の目を見て愕然とした。
何かを疑う、裏切り者を見るような目を、セシルは未だかつて、バロン王から見た事がなかった。
セシル「い、いえっ……けして、そのような……」
王「私が何も知らぬとでも思っているのか!
お前程の者が私を信頼してくれぬとはな……
残念だがこれ以上お前に《紅い翼》を任せてはおけん!
今より飛空艇部隊長の任を解く。」
セシル「へ、陛下!」
セシルは玉座の王に詰め寄ろうとする。
しかし、周りの兵士に取り抑えられた。
王「代わって、《幻獣》討伐の任を与える!
《ミストの谷》付近に出没するそうだ。
その魔物を倒し、ミストの村へこの《ボムの指輪》を届けるのだ。
明日の朝、出発せい!」
すると側に控えていた一人の男が、玉座に近寄って来た。
竜を操り竜を打ち倒す
《竜騎士隊長カイン》
セシルの唯一の親友であった。
カイン「陛下!セシル程の者が魔物退治など……」
王「カインよ。こやつの事が心配ならお前もセシルと共に行け。」
セシル「へ、陛下何を……」
王「もう話す事はない。その指輪を持ち、下がるがよい!」
セシルとカインは、近衛兵に指輪を渡され、そのまま謁見の間を連れ出された。
カイン「やれやれ、大変な事になっちまったな。」
カインは頭を抑え溜め息をつく。
セシル「すまないカイン。お前まで……」
カイン「なぁ~に!気にするな。
その幻獣とやらを倒せば陛下も許して下さる。
またお前も紅い翼に戻れるさ。」
カインはセシルの肩を叩き、笑顔で答えた。
カイン「準備はオレに任せて、今夜はゆっくり休め。
クリスタル回収の任が終わって、お前も疲れているだろうしな!」
そう言うとカインは立ち去ろうとした。
セシル「すまなかったカイン……」
カインは後ろから声を掛けられ、再びセシルの側に寄る。
カイン「まだそんな事を言っているのか?
お前らしくもない。」
セシル「僕は陛下の命令で暗黒剣を極め、暗黒騎士となった。
でも!それはバロンを守る為で、罪もない人々から略奪をする為ではなかったはずだ……」
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