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カイン「そんなに自分を責めるな。
陛下にもお考えがあっての事だ。」
するとカインはどこか遠くを見るような目で、何かを思い出しているようだ。
カイン「俺の父も竜騎士だった。
暗黒剣を極めれば階級も上がるだろうが、俺にはこっちのほうが性に合う。
それに竜騎士でいれば、幼い頃死に別れた父をいつでも感じられる気がしてな……
フッ……らしくない話をしてしまったな。
ともかく考えすぎるな。
お前がそんなじゃ張り合いがない。
幻獣を倒すのは俺だぞ!」
セシル「僕も負けはしない!」
カインの言葉を聞いて、何かがフッ切れたようだ。
自然といつもの笑顔が戻る。
それを見たカインは安心したようで、セシルに別れを言い、去って行った。
カインと別れたセシルは、自室のある城の西側の塔と向かっていた。
「セシル!」
後ろから名前を呼ばれ、立ち止まり振り返る。
すると、一人の女性が走って来ている。
その白く長い髪が乱れるくらい必死に走って来たようだ。
セシルに追いついた女性は髪を整えながら息をつく。
セシル「どうしたんだローザ……」
ローザ「良かった、無事だったのね。
あまりに急な任務だったので心配したわ。」
その言葉を聞いたセシルは微笑する。
セシル「無事さ、僕らは……
無抵抗な魔導師相手に傷などおいはしない……」
セシルは振り返りまた歩きだした。
ローザ「セシル!……あとで貴方の部屋に行くわ。」
セシルは返事せず、黙ったままだ。
ローザはセシルの姿を改めて見回し去って行った。
塔の入口に着いたセシルは扉のノブに手をかける。
「戻っておったのか~セ~シ~ル~!」
頭上から声が聞こえ、見上げる。
すると、何やら作業をしている中年の男性が見える。
壁づたいにロープを使い降りて来た。
バロン国整備技師長
セシルが従える紅い翼も彼が開発した物だ。
シド「ローザが心配しとったぞ。
彼女を泣かせたらこのワシが許さんからな!」
シドはセシルに拳を突き付け、豪快に笑いだした。
しかし、セシルの様子を見たシドは不審に思う。
シド「どうした暗い顔しおって?」
セシル「実はシド……」
先程の謁見の間での事をシドに話した。
シド「なんじゃと?幻獣の討伐に?
お前以外に紅い翼を仕切れる奴がおるか!」
話を聞いたシドは声を荒げる。
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