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シド「まったく……陛下はどうなされたんじゃ。
新型の飛空艇を造れと仰るが……
ワシは飛空艇を人殺しの道具になぞしたくないんじゃ!
街の者も不思議がっとる……」
シドは腕を組み、考え込む。
すると、セシルの事を思い出したのか我に返る。
シド「ともかく気をつけてな!
幻獣なぞお前の暗黒剣で一撃じゃ!
ワシは家に帰るよ。
最近帰っとらんので娘がうるさくてな!」
鼻をかきながら恥ずかしそうに話した。
そしてセシルに別れを言い、去って行った。
シドと別れ、城の西側の塔を登る。
自室に着き、鎧などを脱ぎすぐにベッドに横になった。
眠ろうとしたが、今日の事が頭をよぎりなかなか寝つけない。
(陛下は……どうなされたのだ?
以前はナイトとしても名を馳せ、優しく強いお方だった。
孤児であった僕やカインを自分の子供のように育ててくれた。
ミシディアのクリスタル……
罪もない村人から奪ってまで、手に入れねばならぬほど物なのか……
命令とはいえ、あんなことは!)
すると部屋の前の廊下から足音が聞こえる。
セシルの部屋の前で足音は止まり、扉が開いた。
セシルは扉のほうに目を向ける。
暗くてよく見えなかったが、どうやらローザのようだ。
(そういえば部屋に来るとか言っていたな……忘れていた)
ローザが近づいてきたが、何か顔を合わせたくなかったので反対の窓の方に顔を向ける。
ローザ「何があったの?
急にミシディアへ行ったかと思えば、今度は幻獣討伐に行くなんて……
それに戻って来てから貴方……様子がおかしいわ。」
セシル「いや、なんでもないよ……」
言葉を返すが振り向きはしなかった。
沈黙が流れる。
時計の針が動く音しか聞こえない静寂……
ローザ「だったらこっちを向いて。」
しかしセシルは振り向かず、そのまま口を開く。
セシル「僕はミシディアで……
罪もない人々からクリスタルを!
この暗黒騎士の姿同様、僕の心も……」
すると、ローザはセシルの側に寄り、頬をそっと撫でる。
ローザ「あなたはそんな人じゃないわ……」
セシルはその手を振り払う。
セシル「僕は陛下には逆らえない、臆病な暗黒騎士さ……」
ローザ「《紅い翼》のセシルはそんな弱音は吐かないはずよ!
私の好きなセシルは……
明日はミストへ行くんでしょ。
貴方にもしもの事があったら私……」
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