プロローグ

6/7
前へ
/29ページ
次へ
シド「まったく……陛下はどうなされたんじゃ。 新型の飛空艇を造れと仰るが…… ワシは飛空艇を人殺しの道具になぞしたくないんじゃ! 街の者も不思議がっとる……」 シドは腕を組み、考え込む。 すると、セシルの事を思い出したのか我に返る。 シド「ともかく気をつけてな! 幻獣なぞお前の暗黒剣で一撃じゃ! ワシは家に帰るよ。 最近帰っとらんので娘がうるさくてな!」 鼻をかきながら恥ずかしそうに話した。 そしてセシルに別れを言い、去って行った。 シドと別れ、城の西側の塔を登る。 自室に着き、鎧などを脱ぎすぐにベッドに横になった。 眠ろうとしたが、今日の事が頭をよぎりなかなか寝つけない。 (陛下は……どうなされたのだ? 以前はナイトとしても名を馳せ、優しく強いお方だった。 孤児であった僕やカインを自分の子供のように育ててくれた。 ミシディアのクリスタル…… 罪もない村人から奪ってまで、手に入れねばならぬほど物なのか…… 命令とはいえ、あんなことは!) すると部屋の前の廊下から足音が聞こえる。 セシルの部屋の前で足音は止まり、扉が開いた。 セシルは扉のほうに目を向ける。 暗くてよく見えなかったが、どうやらローザのようだ。 (そういえば部屋に来るとか言っていたな……忘れていた) ローザが近づいてきたが、何か顔を合わせたくなかったので反対の窓の方に顔を向ける。 ローザ「何があったの? 急にミシディアへ行ったかと思えば、今度は幻獣討伐に行くなんて…… それに戻って来てから貴方……様子がおかしいわ。」 セシル「いや、なんでもないよ……」 言葉を返すが振り向きはしなかった。 沈黙が流れる。 時計の針が動く音しか聞こえない静寂…… ローザ「だったらこっちを向いて。」 しかしセシルは振り向かず、そのまま口を開く。 セシル「僕はミシディアで…… 罪もない人々からクリスタルを! この暗黒騎士の姿同様、僕の心も……」 すると、ローザはセシルの側に寄り、頬をそっと撫でる。 ローザ「あなたはそんな人じゃないわ……」 セシルはその手を振り払う。 セシル「僕は陛下には逆らえない、臆病な暗黒騎士さ……」 ローザ「《紅い翼》のセシルはそんな弱音は吐かないはずよ! 私の好きなセシルは…… 明日はミストへ行くんでしょ。 貴方にもしもの事があったら私……」
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加