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オレがまだ人間だったころ、こんなことがあったのだろうか
デジャ・ウ゛
いつの間にか、またここに来てしまった。
弱っちい奴等しかいない現世から連れて来た女の部屋に、
なんでだ畜生
こんなとこに来る必要なんてないのに、ああもう、意味わかんねえ、と
グリムジョーは額に手を当てて首をふった。
その時、目に入ったのは
ソファで眠っている織姫。
まるで、祈りを捧げているかのように眠る彼女は
起きている時の明るく元気な彼女とは違い、
静かで、質素で、聖女のようだった。
いつもとは違う雰囲気の中、なぜか衝動に駆られて
そっと、口付けをした。
一度してしまったら、それは麻薬のように作用して
ついばむように、何度も唇を落とす。
触れるだけのキスは、自分には到底似合うものではない、
それでも、やめる気にはならなかった。
「う……ん………」
先ほどまで深い眠りについていたはずなのに
息苦しかったのか、織姫はうっすらと目をあけた。
「グリ…ム…ジョーさ…ん?」
だが、まだ夢の中にいるらしい。
目の焦点が定まっておらず、ぼうっとあらぬ方向を向いている。
「よか……った…」
その言葉と共に、目から一筋、涙がながれた。
「どうした」
「あの……ね、グリムジョーさんがね、『じゃあな』って言うの」
「それで、悲しそうな顔であたしにキスするの、何回も何回も」
「すっごく怖かった。いなくなっちゃうのが、グリムジョーさんの目が、何もできない自分が、」
「とっても、とっても、怖かったの……」
「だけど」
「よかった、夢で」
「本当に本当によかった…」
ひとしきり話し終わると、たがが外れたように涙がぼろぼろと零れ落ちる。
けれど、嬉しそうに笑っていた。
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