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結樹と出会ったのは今から約10年前…僕は22歳、彼女は20歳の時だった。
もうすぐ卒業を迎え、今の会社の内定が決まり、浮き足立ってるわけじゃないけど浮かれていた時ではあった。
そんな時、廊下の曲がり角を曲がろうとした時に、勢いよくドカッと人とぶつかり、その勢いで倒れ込んでしまった。
「………ッ…いった~い…」
相手も倒れてしまったらしく、泣きそうな声でぶつけた場所をさすっていた。そんな姿に相手が女性であり、僕も痛い所をさすりながら起き上がり、手を差し延べた。
「……あの…大丈夫ですか?」
「…す…すみません、ぶつかっちゃって…」
そして、女性は小柄な手で僕の手を取ろうとした時、腕にはめてある時計を見てあわててしまった。
「∑キャ――――ッ!!!こ…壊れちゃってます~ッ!!!さっきのぶつかった衝撃で…」
時計のカバーのプラスチックが見事に割れていて、その衝撃で秒針が止まってしまっている。
その時の彼女の顔は、とっても青くなっていて…表情がすごく豊かで少し笑えた。
「え…?あ、いいですよこれ…安物だし、買い換えようと思ってたから…」
「べ…弁償します…」
「いや、そんないいですよ…」
「でも…私の気がすみませんから…」
彼女の表情はとても真剣で、たぶん…言い出したら引き下がらないんじゃないかなと思い、なんとなく押される形で…「………じゃ、お願いします…」と答えた。
「はいッ!」と答えた彼女の顔は、さっきまでの表情と違って…笑顔がとてもかわいく見えた。
「あの…お名前教えてもらってもいいですか?」
「あ~…松崎です…松崎雅人…貴女は?」
「私は…佐藤結樹です。」
これが、僕達にとって初めての出会いだった。
この時はまだ携帯電話が流行していない時だったため、僕達は3日後の17時に、校門の前で待ち合わせすることになった。
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