-Prologue-

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「パパーッ!朝ごはんだよー!!」 冬の晴れた寒い日の朝、目が覚め窓からこぼれる朝日の眩しさを感じて、起き上がって隣を見ると、一人娘の樹瑠が目をくりくりさせてこちらを見つめていた。 「おはよー!ママに『パパ起こしてきて』って言われたのー。」 「…………おはよ…朝から元気だな~…」 「うん!!」 ニッコリと笑顔を作り、コロコロ表情の変わる我が子に少し脱力した。 僕を起こすこと…これが朝の樹瑠の日課になっている。 桜花と結婚してもう5年… 樹瑠ももうすぐ5歳になり、昨年から幼稚園に通いだした。 毎日毎日が、があっという間だったような気がするな… 朝の階段を下りていくと、朝独特のいいにおいが漂ってくる。洗面所へ行って顔を洗い、いつものように用意されているタオルで顔を包み込む。桜花が朝食を作り、それを樹瑠と一緒に食べて会社へと出かけていく。 毎日繰り返される変わりの無い平穏な日々… ただ…一つだけ違うのは、僕の中で生き続ける君の存在。 そして、夢の中に出てくるあの時の君… 「いってきます。」 「いってらっしゃい!気をつけてね。」 「パパ早く帰ってきてねー。」 いつも通りの朝が、静かに過ぎていく。
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