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「…………ねぇ、ママー…」
愛娘の樹瑠が、小さな手で私のエプロンの袖を引っ張った。
そのまま目線を合わせるように、下にしゃがんだ。
「………ん?な~に?」
「……………どうしてパパは…さみしそうなの?」
「………え…?」
今にも泣き出しそうな樹瑠の顔は、とても悲しくて…無垢な表情はこちらまで悲しくなってしまう。
時々子供はとても鋭くて、純粋で、何でも見透かされてるんじゃないかと思うことがある。
「………樹瑠は、パパがさみしそうだって思ったのね?」
「………うん…」
「パパはね、きっと悪い夢を見ちゃったのよ。とっても暗くて、悲しくなっちゃったのね…」
今もきっと…覚めることのない、とても長くて、儚い想い…
口に出さなくても伝わってくる、時々見せる不安定な表情…
私の知らない、過去の貴方にはいったい何があったのですか…?
「………ママも悲しいのー?」
そんなことを考えている時、樹瑠が首を傾げながら、不安な表情をした。
「…そんなことないよ!パパはきっと笑ったお顔で帰って来るから、その時は笑ってお帰りなさいって言おうね!」
「………うん!」
「さッ!幼稚園の支度しよっか!」
「うん!今日はね、………」
また、1日…いつもと同じ日が繰り返されていく。
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