-Prologue-

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車はもう少しで赤に変わる信号を目の前に減速する。 黄色から赤に変わって止まると、横断歩道を人の波が押し寄せ通り過ぎていく。 それはいつもと変わらない、毎日繰り返されていく光景。 急いで走っていくサラリーマンの姿、自転車に跨り走り行く学生の姿、携帯電話を耳に当てて喋りながら歩くOL、友達と他愛のない会話で笑顔を見せ合う女子高生達の姿など、いろんな人々が僕の目の前を横切っていく。 その中で、雨が降ってないというのに真っ赤な傘をもつ、髪の毛の長い女性がいて、白いコートにそれがとても映えていて、僕の視線はその姿にいつの間にか釘付けになっていた。 横から歩いて来るスラッとした姿、ウェーブのかかった柔らかな栗色の長い髪の毛が印象的で、顔は遠目でしか分からずほとんどみることができないためか、顔を見てみたいと言う衝動にかられた。
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