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段々とこちらへと歩いて来る姿に見とれて、自然と目線が女性の方へと注がれていく。
そして、僕の目の前を通り過ぎていこうとした時、女性は誤って真っ赤な傘を落としてしまった。
「あっ…」
吊られるように声を出してしまい、あわてて口許を手で押さえた。
そしてその傘を拾い上げた瞬間、女性の髪の毛がふわっと風に靡いて見えなかった顔が見えて、僕はその瞬間に思考回路が麻痺してしまった。
女性と目が合ってしまったからだけじゃない…
「………何…で…」
パッチリとした大きな二重の目、膨れた形のいい真っ赤な唇…触ったら壊れてしまいそうな細身の輪郭…
その顔は、あまりにもあの時の君の顔によく似ていて、正直動揺が隠せなかった。
信号が青になったというのに動けなくなってしまい、後ろからクラクションが鳴り響き、あわてて我に返って車を走らせた。
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