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勇気を出して踏み出した。これは大いなる一歩だと俺は思う。
明日クラス中にこの俺の勇姿を自慢してやろう。
と、思った瞬間のコトだ。
がらがらがらっ
『ねえ君ーぃ、暇ぁ?』
「ほぎゃあああ!?」
いきなり曰く(いわく)付きのあの第一理科室の引き戸が開き、中の存在が俺を呼び止めた。
恐怖のあまり情けない声を出してしまう。
『レディの登場で発叫なんて失礼ね』
なんでレディがこの理科室に居るんだ
そこに居たのは制服の上に少し丈の長い白衣を羽織った女生徒だった。しかも、リボンの色から見るとセンパイ。
結構美少女だ。目大きいし、スタイル良いし、足細いし、て、俺はオッサンか。
いやらしい発想は振り払い、恐る恐る彼女を見つめる。
ウェーブがかかった茶髪を細いきれいな指先で弄びながら確かに彼女は言った。
『おねーさんと、楽しいコトしない?』
**************
一瞬でもドキッとした俺が馬鹿だった。変なヒトははじめから終わりまで終始、そして万国共通で変なヒトだったのだ。後悔先に立たずとはこの事を言う。
柱に縛り付けられた哀れなウサギ(認めたくないけど俺)は今、天使の皮を被った狼に喰われるところだ。(狼が天使ってある意味すげえ)
そう思うのも当然、目の前にあるのはボコボコグツグツと嫌な音を立てる液体を入れた三角フラスコなのだから。
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