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『嬉しいな、ココ誰も通ってくれなくってさあ』
そりゃそうだ、誰がむざむざ命を落としに行くもんか、そんなの余程のバカか命知らずしかいないだろう。
俺はそのバカだけど。
「へえ、そそそそうっすか…」
力無くどもる俺は情けないことこの上無い、ちくしょうかっこわるい…!
しかし己の不恰好さを悔いている場合では無いらしい。
彼女はおかしな音と共にピンクから緑から変色し続けている怪煙を立ち上らせている三角フラスコを俺の前で振っている。煙は赤いのに液体は緑だった。
かなり満足げな顔でこちらを向いた彼女は、『こんなものしかないけど、ジュースだよ☆』なんて言いながらフラスコをずいずい近付けてきた。
待て、そんなジュースがあってたまるか。死ぬってそれどう見ても飲んだら死ぬって。
『召し上がれ☆』
「待って下さいソレ死にますからー!!」
頼みの綱の手が使えないので足をじたばたさせて必死の抵抗を見せた。火事場の馬鹿力はいつ頃出てきてくれるだろうか。
彼女は『失礼ね。…死なないって、多分☆』なんて素敵に無責任な事を言い出した。
語尾の☆が無責任さをより強調させる。
「勘弁してください俺まだ死にたくないんですこれからやりたいことだって将来のユメだって無くもないしそれにそれにまだ恋愛だってしてないし…なんでもしますから…!!」
『……なんでも?』
彼女の口端がいやらしく歪んだ。
命欲しさにノンブレスで解き放った言葉が後でより大きくなって帰ってくるなんて、勢いとノリで生きてきた俺はその時思わなくて、そして後から後悔することになるのだった。
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