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連れてこられた先は中庭のビニールハウスの中。ここなら人は来ない。十分に俺を殺れると言うわけだ。
考えたら本格的に怖くなってきた。
「昨日はどーもねっ」
前を歩いていたのを急に振り向いたから太陽光に煌めく髮が揺れて、それに相応するさも愉しそうな笑みを浮かべながらセンパイは言った。何がどーもねっ、なのだか。
落とし前つけてやろーじゃねーか、とか?
悪い想像はなかなか萎まない。
「折り入って柚亜くんにお願いがあるのですっ」
センパイが期待の眼差しで俺を見る。やめてほしい事この上無い。
ぴらり、センパイが懐から取り出したのは一枚の用紙。しかもそれは「部活動入部希望用紙」というなんとも身近なものだった。
身近と言っても、俺や村田は意図的に帰宅部なのだが。まさかその帰宅部選択が更なる不幸を呼び寄せることになるなんて、俺には予想もつかなかった。
希望部活動名称の項目には書体のしっかりとした綺麗な文字で【マッド部】と書かれていた。嫌な予感。
「……あの、マッド部って何スか…」
ぽつりと尋ねると、彼女は誇らしげに答えた。
「安全なモノからちょっとばかし危険なモノまで、全てを研究しましょう!な薬品研究部!」
引いた。
でも希望部員がまだ私1人しか居なくて、クラブ扱いなんだよね、と力説する彼女に、引いた。
そして同時に、部員一人なのにクラブ扱いされている事実に、引いた。
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