第四章 本当のキモチ

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自慢出来る程頭の良くないニモですからいつまで経っても水槽の中をゆっくりと泳ぎながら考え続けています。 考えが堂々巡りになってしまって答えが出せないのです。 そこへいきなり大きな棒が水の中に入ってきました。 ニモはとてもびっくりして全速力で棒から逃げます。 人間の子供が何日もニモの様子が変なのに気付いたので棒を突っ込んでちょっかいを掛けたのですが、ニモにはそんな事全然判りません。 棒は水面から延びていてしつこくニモを追いかけます。 逃げても逃げても追いかけてくるのでニモは泣きそうになります。ニセモノの珊瑚の影に隠れても棒はニセモノの珊瑚を動かして更に追いかけてくるのです。 何度目かニセモノの珊瑚の影に隠れたら棒は諦めたのか、水の中から去っていきました。 ニモはなぜ追われなければならないのか全く判りません。 「もう、嫌だ!こんな所いたくない!! ボクはすぐにでも珊瑚の海に帰るんだ!!」 ニモは赤い顔をさらに赤くして叫びます。 その時からゼルダ・フィッツジェラルドのくれた玉を食べる事に反対する考えは綺麗さっぱり消えてしまいました。   ニモは玉を食べたらどうなるか判りません。 ただ、ニモの中で一番強い望みは珊瑚の海に帰る事だと思っています。 ニモはまた人間に捕まりたくないので誰もいなくなるのを待ちます。 珊瑚の海にいた頃よりも比べられない位ニモは人間に対して警戒心を抱く様になっているのです。 待つのはとても長く感じられて大変でしたが、捕まってしまっては意味がないので辛抱強く待ち続けます。 水槽から人間が全く見えなくなってもニモはしばらく様子をうかがいます。 辺りに人間がいないと判断するとニモはすぐに玉を飲み込みました。 玉を飲み込むとすぐにニモは頭の中が真っ白になりました。 真っ白で何も考えられなくなっていく中でもニモは「絶対に珊瑚の海に帰るんだ」と強く祈り続けます。
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