第四章 本当のキモチ

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ニモは気がつくと水の外に出ていました。 水の外でも苦しくありません。ちゃんと息が出来るみたいです。 いつもと全く感じが違うのでニモは自分の身体をキョロキョロとみてみました。 なんとニモはカクレクマノミとはかけ離れた姿になってしまいました。 胸ヒレは鋭くてよく斬れそうな爪が生えたとても力が強そうな腕になっています。 腹ビレは力強く大地を踏み締める大きくて頑丈そうな脚になっています。 尾ビレは大ウツボの身体みたいにしなやかに動く長い尻尾になっています。 口にはナイフの様な牙が沢山生えて目の下の辺り迄大きく裂くています。 身体はとても硬そうでキラキラと輝く鱗に覆われています。 ニモは怪獣になってしまったのです。 大きさは百倍、いえ千倍にも大きくなってしまっています。 ニモがカクレクマノミだった頃と同じモノはもう身体の色しかありません。 怪獣のニモはちょっと広い空き地に立っていました。 空き地の所々で真っ黒の煙が立ち上っています。 ニモは周りの家が小さく感じていて、大きな脚で踏んづけたり長い尻尾を振り回すと家は簡単に潰れてしまいます。 ニモはちょっとだけウキウキして家々を壊し続けました。   「怪獣が町を破壊しています」と言う報告が入ったのは朝、学校や会社に出掛ける時間が過ぎてしばらくしてからの事です。 報告を受けた国の一番偉い人、ドナルゾ・レーズン大統領は跳びあがりながら腰を抜かしてしまいました。 レーズン大統領は国民みんなからの信頼も篤く大人気で数々の改革をしてきた立派な人です。それだけならとても素晴らしい人なのですが、困った事に軍隊が大好きで大好きで、事ある度に最強と云われている軍隊を派遣しようとしたがるのです。 「ええい、我が国に現れるとは不届きな怪獣め。世界最強の我が軍でギッタンギッタンにしてしまえ!!」 レーズン大統領は顔を茹で蛸の様に真っ赤になりながらもしかしたらカッコいいかも知れない台詞を言いましたが、腰を抜かしたままでは全然カッコよくありません。 副大統領や秘書の人達がなだめすかしてもレーズン大統領は聞く耳を持ちません。「軍を派遣して怪獣をやっつけてしまえ」の一点張りです。 尤も、怪獣は町をメチャクチャにしている訳ですから、一刻も早く退治しないといけないのは確かです。 かくして怪獣を退治する為に軍隊が出動したのでした。
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