第四章 本当のキモチ

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ニモが町の破壊に勤しんでいると嫌らしい笑い声が聞こえました。 声の方にニモが振り向くと、そこにはゼルダ・フィッツジェラルドが空にプカプカと浮かんでいました。 「よ~、ニモ。どうやら望みが叶ったみたいだな。おめでとさん。 しっかし、デカくなったものだよなぁ~。ま、それだけお前の怒りと憎しみが強かったって事だな。」 ゼルダ・フィッツジェラルドは「ご機嫌いかが?」の挨拶もなしに呆れ果てた感じでしみじみと言いました。 ニモはゼルダ・フィッツジェラルドに食って掛かろうとしました。でも怪獣になったニモは何十メートルもあるから、ゼルダ・フィッツジェラルドなんか小さ過ぎて潰してしまいそうなので叫ぶだけにしました。 「嘘つき!ボクの望みを叶えてくれるんじゃなかったの!?」 「叶えただろうが。俺様は言った筈だぞ、お前の一番強い願いを叶えるって。 お前が何を願うつもりだったかは知らないが、一番強い望みはソレだったって事だ」 「そっ、そんなことあるもんかっ!ボクの願いは珊瑚の海に帰ることだけだっ!!」 「そうは言ってもなぁ、俺様は嘘をつかない事で有名なんだ。 今のお前なら自分の心を掴む事が出来るだろ。お前の気持ちとよく向かい合ってどの気持ちが一番強いかよく確かめてから文句を言いな」 ゼルダ・フィッツジェラルドの言っている事は今一つ理解出来ないニモでしたが、嘘をついていない事と「自分の心を掴む」事が出来るのを直感的に理解していました。 ニモは目を閉じて自分の心と向かい合います。   色々な気持ちがありました。強い気持ちもありますし、弱い気持ちもあります。 強い気持ちは何時までもあり続け、強い光を放っています。弱い気持ちは小さくか細い光しかなくてすぐに消えてしまいます。 ニモは自分の心と向かい合って、とても強い気持ちがあるのを感じました。溢れんばかりの希望で太陽の様に光り輝いています。 それはニモの珊瑚の海に帰って平和に暮らしていきたいと言う願いです。 その気持ちはとても大きくてとても強いものでした。 「やっぱり珊瑚の海に帰りたいってキモチはとっても強いんだ」 ニモは嬉しそうに微笑みました。でも微笑みはすぐに消えてしまいます。 こんなに強い気持ちなのにあの玉は叶えてくれなかったからです。
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