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此処は南の海の珊瑚礁、世界で一番美しいと謳われる海です。
珊瑚礁には沢山の海の仲間達が住んでいます。その中にニモというカクレクマノミがいました。
ニモはまだほんの小さな子供でしたが、いつも元気一杯です。
他の仲間も元気に泳ぎ回っています。
綺麗な海水の中で美しい珊瑚に囲まれ、眩しい太陽の光を一杯に浴びてニモは毎日が幸せです。大変な事や辛い事は勿論あります。
それでもニモは幸せであると胸を張って言える自信があります。何故かって問われたら答えられないのですけど。
ある日のこと、朝日が昇る前に人間達がやって来ました。
いつもなら太陽が昇りきってから来てジッと眺めたり、食べ物をくれたりもします。
だからニモ達は必要以上に人間達を警戒しません。
しかし、今日来た人間達は眺めもせず食べ物もくれません。それどころか珊瑚をベキベキと壊してしまいます。
人間達は壊した珊瑚を籠に詰めていきます。ニモ達は慌てて逃げ出しました。しかし幾らも泳がない内に前に進めなくなってしまいます。
どうやら網に覆われてしまった様です。
美しい珊瑚礁は見るも無惨な姿にされてしまいました。獰猛なウツボだって大食いなオニヒトデだってこんなに酷いことはしやしません。
ニモは悲しいやら悔しいやらで心が一杯になってしまいます。
他の仲間達はどこか諦めた表情で「仕方ない」とか「おしまいだ」とか言っています。
ニモは絶対諦めたくありません。
けれど、この先どうなるか判りませんでした。
カクレクマノミでない何匹かの魚が別に分けられ、尖った刃物で切り割かれていく様はニモにとって大変ショックでした。
彼らがどうなったのかニモは知りませんし、知りたいとも思いません。
自分が同じ目にあわない事をひたすら祈るばかりでした。
幸い、ニモは捌かれて食べられる事はありませんでした。
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