第二章 水槽という名の牢獄

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それから、ニモ達は種類別に分けられて沢山の水槽のある所に連れてこられました。カクレクマノミはニモだけだったので一匹だけでカクレクマノミしかいない水槽に入れられます。 水槽の中のカクレクマノミはニモより少しだけ大きいのから大人までそれ程大きくない中に沢山入れられています。 どうにか水槽から出られないものかとニモが思案している所に水槽のなかのニモより少しだけ大きなカクレクマノミが声をかけてきます。 「元気だな、坊主。どこから来たんだい?」 「綺麗な珊瑚の海からだよ。お兄さんは?」 「俺は生まれてからずっと水槽の中さ」 ニモが明るく答えるとカクレクマノミは寂しそうに呟きます。 「海っていうのはきっと素晴らしいのだろぅなぁ…………でもよ、人間に捕まったら最後、死ぬ迄水槽の中さ」 「そんな事ないよっ!!絶対にボクは海に帰るんだっ!!」 カクレクマノミのぼやきにニモは赤い顔を更に真っ赤にして叫びます。 ニモの叫びにも驚きもしないカクレクマノミは頑張ってくれとだけ言ってニモから離れて行きました。   ニモは水槽が嫌いになりました。狭いのですから。 ニモはまだ小さいのですが元気に泳ぎ回ります。 水槽の中ではすぐに透明な壁にぶつかってしまってしまいます。どんなに早く激しくぶつかっても壁はびくともしません。 何度かぶつかっている内に水の流れで壁が判る様にはなりましたけど。 ニモは強く海に帰る事を願い続けます。同時に理不尽な状況に陥れた人間達への怒りと憎しみも抱き始めました。 ニモ自身は気付いていないようすですけども。   ニモは自分がまだ小さい子供なので、一杯食べて一杯運動して、誰よりも立派で逞しい大人のカクレクマノミになれば水槽の透明な壁を突き破って逃げ出せると考えました。
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