第二章 水槽という名の牢獄

3/3
前へ
/49ページ
次へ
だからニモは毎日狭い水槽の中を元気に泳ぎ回ります。水面に降ってくる食べ物を他の誰よりも沢山食べます。 何日か経った頃、ニモが泳いでいる水槽をジ~ッと見つめている人間がいました。 どうやら子供の様です。後ろの方を向いて何かを言っていますが、生憎ニモなは人間の言葉なんてちっとも判りません。 子供が後ろを向いて幾らもしない内に、水槽の中に網が入ってきました。網はニモを狙っているみたいです。 ニモは必死で逃げましたが狭い水槽なのですぐに捕まって水の外に出されてしまいます。 水の外では息が出来ません。でもニモが苦しくなる前に水の中に入れられたした。 けれどもニモはそこのあまりの狭さに驚いて泣き出しそうになりました。 狭い水槽よりも更に狭いのです。 少し泳ぐとすぐに透明な壁にぶつかって進めなくなります。 今度の壁はクラゲみたいに柔らかいので、幾らぶつかってもその度に跳ね返されてしまいます。 ニモは気が狂いそうになってしまいました。 人間に捕まってこんな酷い仕打ちをされるのは何故なんだろうと考えました。 自分はそんなにも悪い事をしたのだろうか? 神さまの罰なのだろうか? ニモは泣きながらそんな事を考えます。幸い、とても狭くて柔らかい壁の中にはそれ程長い間入っている事はありませんでした。 新しく入れられた水槽は以前の何倍も大きな物でした。珊瑚みたいな石が幾つも底にあります。 でも珊瑚ではなくよく似た石でした。 水槽の中にいる生き物はニモ一匹だけみたいです。 ニモは珊瑚の海が恋しくて泣きました。 もうあちこち連れて行かれるかのはまっぴらです。 前の水槽よりは広いのですが、珊瑚の海に比べればまだまだ狭いと言うしかありません。 ニモは一刻も早く立派な大人になって水槽から逃げ出して海に帰ろうと固く決心しました。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加