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「えっと、ボクはニモ。カクレクマノミのニモだよ。
ゼルダなんとかさんはボクに用なの?」
びっくりしていましたが、ゼルダ・フィッツジェラルドが名前を名乗ったのでニモも名乗ります。と言ってもニモには人間の様に名字なんてものはないので簡単です。だからニモにはゼルダ・フィッツジェラルドなんて長ったらしい名前なんてそう簡単に覚えられません。
「ん~、用というかな、お前の強い怒りと憎しみに惹かれて来たってところだな」
ゼルダ・フィッツジェラルドは塩と砂糖を間違えた料理を食べたみたいに奇妙な顔をして言いました。
それからニモをじっくりと覗き込んでからとっても素敵なものを見つけた様に目をキラキラ輝かせます。
「ほぅ、面白い。お前、魔王さまに祝福されているな」
「祝福?魔王、さま?」
「魔王さまは俺様達悪魔を統べる凄い強くて偉い方だ。
時々、気まぐれらしいんだが、産まれたばかりの生き物に祝福されるんだよ。
祝福された生き物は感情の起伏が激しくなって強い魔力を持ち易くなるんだよ」
ゼルダ・フィッツジェラルドは興奮して一人だけ納得した様に頷きますが、残念ながらニモにはまるで判りません。
「それって、凄い事なの?」
ニモがゼルダ・フィッツジェラルドの説明で判ったのは「なんだか凄そうだな」と言う事だけでした。ニモは素直にゼルダ・フィッツジェラルドに訊いてみます。
「そうだな、まぁ、凄いな。俺様が力を貸してやればお前の望みは多分叶うだろう」
「本当?なら今すぐにでも珊瑚の海に帰れるの?」
ニモは目をキラキラ輝かせながら叫びます。
珊瑚の海に帰れるかも知れないと判ると現金なニモはそれ迄物凄く怪しいと思っていたゼルダ・フィッツジェラルドが天使みたいに感じられました。
「お前がソレを本当に望むならな。直接手助けするのは色々マズいから、俺様が出来るのはお前に力を与える事だ」
「つまり、どういう事?」
「お前に俺様の魔力を少しだけ貸してやる。普通の生き物なら少しだけとは言え俺様の魔力を受け入れる事なんて出来ないが、魔王さまに祝福されているお前なら大丈夫だろう。
貸した魔力はお前の強い気持ちと結びついて力を発揮する。お前が強く願えば大抵の望みなら叶う筈だ。
まぁ、保証はしないがな」
「え~と、ボク次第で珊瑚の海に帰れるって事?」
「そう言う事だ。とりあえず、魔力はこの中に入れておいてやるから欲しければ食べな」
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