命の価値

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「何か食いてえもんあっか?」 夕方、もう地平線に半分を飲み込まれた夕日が、病室のベッドで花瓶の花をいじるアイツを紅く染めた。 「ううん、大丈夫だよ!ごめんね裕。」 俺を[裕]と呼んだアイツ。 [篠原 雛](しのはら ひな)は、俺が生まれて間もない頃からの幼なじみ。雛の両親は、五年前に他界していて、一人っ子のアイツは俺の家で暮らしていた。 「ったく…謝んなって言ってんだろ…」 元々体が弱いのか、雛は昔からすぐに発作がおきて、入退院の繰り返しだった。 今回、病院にいるのもソレが原因なのだが。 雛はよく謝る。 何かにつけ「ごめんね」が多い。体が弱いのは仕方ないことなんだから、別にそこまで念入りに謝んなくても…。 俺だって当たり前の事だからやってるだけなのにな。 「とりあえずもう寝ろよ。体に響くぞ。」 「え~!!ヤだ!」 「お前はいくつだよ…」 こう言って、雛の左頬を軽くつねり、痛がる雛を見てお互い笑い合う。 いつものことだ。 「あ、そだ。なあ雛、お前ガラス細工好きだったよな?」 「え?うん!どして?」 「いや…こないださぁ、イイトコ見つけたんだ。だから…落ち着いたら行ってみないか?」 「ホントに!?じゃあ裕のおごりね!」 「やっぱりそう来るのかよ」 嘘です。大分前から店さがしてました。 雛はそんなことも知らないで、ただ無邪気な笑顔をばらまいていた。 俺の大好きな あの笑顔。 「だからちゃんと復活しろよ。」 「…うん…!」 あれ? 今… 雛の表情 曇った…?
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