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夕日の綺麗な景色。
俺と雛が座るベンチからは絶景だった。街を真っ赤に染めていく。
「私ね、このベンチ特等席なんだよ!凄く夕日がきれいだから。」
「ホント、だよなぁ~!」
上手く笑えてるか?
心配すんな俺!
雛はずっといるんだよ!
「なんで泣いてるの?裕。」
「え…?」
「ごめんね裕。心配ばっかりかけて。大好きだよ…裕。」
「っ……!!!!」
俺は力一杯雛を抱き締めた。
本当に小さくて、細い肩…。
柔らかい雛の髪の毛が、鼻に当たって少しくすぐったい。
雛の匂いがする…。
「昔の約束…覚えてるか?」
「約…束?」
「そ。ガキん頃、結婚しようって約束しただろ?…あれ、本気だからな…。だから…元気になれよ…。」
恥ずかしいとか、照れ臭いとか、そんな感情じゃなかった。
ただ単純に
愛してる。
「よかった…覚えてたんだ…。頑張るよ。ちゃんと待っててね…裕。」
俺の体に顔を埋めていたから見えなかったけど、はっきりわかった。
泣いてたよな?
雛…。
自分の心臓がえぐられたんじゃないかって思うほど、苦しかった。
「なぁ雛…今調子どうよ?」
「え…?全然大丈夫だよ?なんで?」
「明日さ、ガラス細工屋行かね?」
埋めていた顔をそっと上げて、雛は嬉しそうに微笑んだ。
「うん!行きたい!裕!」
「よし、じゃあ約束だぞ。」
「うん!」
指切りをした。
少し震える手で。
その手で雛をそっと抱き締めて、長いキスをした。
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