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「ここに来た目的はなに?」
「成仏しに」
いや、そこ言い切るなよ。
「それは分かったんだけどさ。何でそうなったのか、君のことをもう少し聞かせてくれないか?」
「……そうですよね。見ず知らずの人間に突然『成仏させて下さい!』なんて言われたら、それは驚きますよね」
知ってる人間に言われても驚きます。
「分かりました。私の過去を少しお話します」
物分かりが良くて大変結構。
お兄さん嬉しいぞ。
「実は私、三ヵ月前に事故で死んでるんです」
……軽く言うね。この子。
そんなことだろうと思ったけどさ。
俺はどうしてこういう類の輩に好かれるんだろうね。
「それで、一応天界の方まで行ったんですけど……」
「けど?」
「『現世に未練が残ってるみたいだから、連れていくことは出来ない』って、係の方に言われちゃって」
天界にそういう係があるのか?
えらいファンタジーな話だな……。
「それで途方に暮れていたら、『現世に私の知り合いが居る。とても頼りになる男だから、一度訪ねてみるといい』って言ってくださった方が居たんです。それで、その方に居場所を教えてもらって、ここまで来ました」
ふむふむ。なるほどねぇ。
……って、ちょっと待てよ?
「俺、天界に知り合いは居ないんだけど……」
「えっ!そうなんですか!?」
なぜ驚く。
普通に考えれば分かるだろう?
「大天使のサリエル様という方なんですけど……」
だから知らないって。
大天使なんて大層なご身分の知り合い、俺には居ない。
あの谷口はある意味悪魔だけどさ。
「あっ!『沙里奈と言えば通じる』って言ってました!」
……。
あいつか。
あいつの仕業か。
というか成仏してたのか。
そして大天使なんてやってるのか。
なにこのいらないコネクション。
「どうしたんですか?」
不思議そうに首を傾げるメリー。
「いや。そいつ、俺の知り合いだった」
腐れ縁もここまでくると、ある意味呪いだぞ?
……俺をあそこで殺さなかったのは、これを狙っていたのか。沙里奈。
「でもすごいですよねー。悠二さん、大天使様にもお知り合いが居るんですもんね」
「ん?なんで俺の名前を?」
「サリエル様に教えてもらいました。名前で呼べば喜ぶからって」
ガセ情報をいたいけな少女に吹き込むな!本気にするだろっ!
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