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「なぁ」
食器をスポンジで擦りながら、俺は美咲に訊いてみた。
「結局さ、未練って何なんだ?」
ちなみに夕食は茹でたそうめんを炒めてみました。ソーミンチャンプルーっていうのかな?
初めてにしては上出来だったけど。
「う~ん……」
美咲の考える声がする。
オープンキッチンだったら相手の様子まで分かるんだろうけど、生憎うちはそういう作りにはなっていない。
だが、大体察しは付くぞ。
恐らく顎に指を当てて考えているに違いない。
「やり残したかなぁって思うことはいくつかあります。多分それのことかと」
「十分だ」
蛇口をひねって水を止める。
洗い物は終了。
「その中に今すぐ解決出来そうなのってあるか?善は急げだからな」
手を拭きながら居間に移動する。
美咲はソファーに座っていた。
「そうですねぇ……」
やはりな。顎に指を当てて考えている。
俺の勘は妙なとこで鋭い。
自分でも分かってるさ。
「……ハーゲン〇ッツをお腹一杯食べたいです」
「へっ?」
俺は美咲の向かい側に座ろうとしていた体を止めた。
「ハーゲン〇ッツ?それってアイスだよな?」
「……はい」
美咲は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「小さい頃からその……夢だったんです。アイスをお腹一杯食べてみたい、というのが」
ふむ。
分からなくはない。
分からなくはないが……。
「夕食の直後だぞ?」
「別腹ってことで」
その華奢な体のどこに入るのかと。
「ダメ……ですか?」
……見るな。
その潤んだ瞳で俺を見つめるな。
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