third call

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ん……? 眩しさに目を開けると、目の前には真っ青な空が広がっていた。 なぜに空? 起き上がって辺りを見回せば、目が痛くなるくらい真っ黄色な花が咲いていた。 それがずっと向こうの方まで続いている。 花畑ってやつか? いや待て。 これはおかしいぞ。 俺は美咲をカーチャンのベッドに置いてきたあと、自分の部屋に入って寝た筈だ。筈って言うか確実にそうだ。 当然俺の部屋は天井が青空模様じゃないし、床一面に花をちりばめてもいない。 つーかこれ、室内じゃないな。 どう考えても屋外だ。 気持ち良い風も吹いてるし、高原とかそういう雰囲気がある。 どうしてこんなところに? 頬をつねってみてみたが、まったく痛くない。 ……なるほど。 これは夢か。 夢なんだな。 俺もこんなメルヘンチックな夢を見るようになったんだな。 やれやれ、歳は取りたくないねぇ。 「残念だが、これは夢ではない」 ……。 後ろから声がした。 凛とした、澄んだ声。 聞き覚えがあるぞ。この声。 嫌な予感が……。 「どうした?こっちを向いてみろ」 何か言われてますよ?奥さん。 ここはあれだよね、逆らったらまずいよね。 「……」 振り返ってみると、白いローブを着た女が一人、不敵な笑みを浮かべて立っていた。 「久しぶりだな。悠二」 笑みを崩さないまま、女は言った。 風になびくサラサラとした黒髪。 中学生くらいのチビッこい体。 間違いない。 奴だ。 「ふっ。久しぶり過ぎて、私の名前を忘れたか?」 人を馬鹿にしたような口調だな。 生憎だが、俺はそんなに記憶力が悪い人間じゃない。 「いや……。ちょっと惚けてただけだ。沙里奈」 「よろしい」 沙里奈は満足そうに頷いた。 「惚けてるといつもの馬鹿面がよけい馬鹿っぽく見える。やめた方がいいぞ?」 こいつ……。 まったく変わっちゃいないな……。
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