third call

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「そんな感じで私は大天使となった訳だ」 ほんと、あの幽霊娘が今じゃ大天使だもんな。 世の中なにが起こるか分からない。ついでに、少しは俺にも感謝してもらいたいね。 成仏させてやったのは俺なんだから。 「サリエルはどんな仕事をしているんだ?」 「その名で私を呼ぶな」 沙里奈は口を尖らせた。 「二人の時くらい普通の名前で呼べ」 「はいはい。分かりましたよ」 ちょっと悪ふざけをしてみただけさ。 久々の再会だ。からかったって罪はないだろう? 「で、沙里奈はどんな仕事をしているんだ?」 「私の仕事は、霊魂が罪を犯さないように監視すること。言うなれば警察だな」 ほぅ。 天国にも警察が必要なのか。 「下界と何ら変わりないさ。悪巧みをする奴も居れば罪を犯す輩も居る。少しは楽になると思ったんだけど」 そこがまた面白いんだけどなと、沙里奈は首を振った。 俺がイメージしていた世界とは大分違うな。死んでからも働かなきゃならないのか。 「今は死者の天国と地獄への振り分けも兼任しているからな。ますます忙しい」 兼任ってことは担当している奴が居る訳だ。 なんでまた兼任なんか? 「本来は閻魔大王が担当しているんだけど、所得隠しと年金未納が発覚して解任されたんだ。新しい大王が決まるまで私がピンチヒッターってわけ」 ますます現世とそっくりだ……。俺、やっぱり死にたくないな。 ん? ちょっと待てよ? 「閻魔大王ってのは仏教の存在だよな?なんでキリスト教系統のお前と共存しているんだ?」 「宗教なんて人間が作った一つの思想に過ぎない。天界で宗教なんて関係あるものか」 沙里奈は何やら哀れむような目で俺を見た。なんか悔しい。 しかし、言われてみれば確かにそうかも知れない。 宗教というのは神が居るだの何だの言ったって、元を正せば作ったのは人間だ。本当に神が居るかなんて誰にも分からないしな。 ……大天使は目の前に居るけど。 「つまり、天界は釈迦やらアッラーやらが仲良く暮らしている訳か」 「そういうこと。ま、そういう人たちは明らかに別格だけどな」 下界では宗教を巡って戦争まで勃発してるのに。これは何かの皮肉かねぇ。 神々の力で何とか出来ないのか? 「下界は下界、こちらはこちら。世界が違うんだから、干渉することは許されないのさ」 ……どの口がそれを言っている?
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