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「そんな感じで私は大天使となった訳だ」
ほんと、あの幽霊娘が今じゃ大天使だもんな。
世の中なにが起こるか分からない。ついでに、少しは俺にも感謝してもらいたいね。
成仏させてやったのは俺なんだから。
「サリエルはどんな仕事をしているんだ?」
「その名で私を呼ぶな」
沙里奈は口を尖らせた。
「二人の時くらい普通の名前で呼べ」
「はいはい。分かりましたよ」
ちょっと悪ふざけをしてみただけさ。
久々の再会だ。からかったって罪はないだろう?
「で、沙里奈はどんな仕事をしているんだ?」
「私の仕事は、霊魂が罪を犯さないように監視すること。言うなれば警察だな」
ほぅ。
天国にも警察が必要なのか。
「下界と何ら変わりないさ。悪巧みをする奴も居れば罪を犯す輩も居る。少しは楽になると思ったんだけど」
そこがまた面白いんだけどなと、沙里奈は首を振った。
俺がイメージしていた世界とは大分違うな。死んでからも働かなきゃならないのか。
「今は死者の天国と地獄への振り分けも兼任しているからな。ますます忙しい」
兼任ってことは担当している奴が居る訳だ。
なんでまた兼任なんか?
「本来は閻魔大王が担当しているんだけど、所得隠しと年金未納が発覚して解任されたんだ。新しい大王が決まるまで私がピンチヒッターってわけ」
ますます現世とそっくりだ……。俺、やっぱり死にたくないな。
ん?
ちょっと待てよ?
「閻魔大王ってのは仏教の存在だよな?なんでキリスト教系統のお前と共存しているんだ?」
「宗教なんて人間が作った一つの思想に過ぎない。天界で宗教なんて関係あるものか」
沙里奈は何やら哀れむような目で俺を見た。なんか悔しい。
しかし、言われてみれば確かにそうかも知れない。
宗教というのは神が居るだの何だの言ったって、元を正せば作ったのは人間だ。本当に神が居るかなんて誰にも分からないしな。
……大天使は目の前に居るけど。
「つまり、天界は釈迦やらアッラーやらが仲良く暮らしている訳か」
「そういうこと。ま、そういう人たちは明らかに別格だけどな」
下界では宗教を巡って戦争まで勃発してるのに。これは何かの皮肉かねぇ。
神々の力で何とか出来ないのか?
「下界は下界、こちらはこちら。世界が違うんだから、干渉することは許されないのさ」
……どの口がそれを言っている?
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