third call

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ここらでちょっと整理しておこう。 まず、この空間はあの世とこの世の境目である。 なんで俺がここに居るのかと言うと、目の前に立っている『大天使サリエル』こと沙里奈が俺の魂を引っ込抜いて連れてきたから。 次に、天国というのは下界とはそれ程変わりない所だ。 閻魔大王の所得隠しだの罪を犯せば捕まるだの、死んでからも楽になる訳ではないらしい。転生するまでは働くってことか? 億劫だな……。 大体こんなところか。 俄かには信じられない話だが、全て俺の体験及び大天使様の証言が元である。 信じるしかあるまい。 だが、俺にはまだ解せないことがある。 「美咲をどうして俺のところによこした?」 そう。 わざわざ俺によこした意味が分からない。 お前が何とかしろよ。 「それにはちょっとした事情があるんだ」 沙里奈は続ける。 「私は今、死者の天国と地獄への振り分けを担当していると言ったな?」 あぁ。 それはさっき聞いた。 「それ自体は簡単な作業なんだ。生前の経歴を見て決める。簡単に言えば、犯罪者は地獄、善人は天国、という具合だな」 ふむふむ。 じゃあ俺は天国行きな訳だ。 「しかし、振り分けには前提条件があってな」 俺の話は無視ですか。 「現世に未練を残していないこと。それが前提条件だ」 未練を残していないか。 それまたどうして? 天界で世話してやれよ。 「そうしてやりたいのは山々なんだかな」 沙里奈はため息をついた。 「天界と下界の区別をつけるため、という理由で未練がある者の天界入りは許されないんだ」 むー……。 色々と厳しいんだなぁ。 「ま、未練がある者は現世に留まるからな。天界に来ること自体が珍しい。十年に一度とも、百年に一度とも言われている」 つまりその珍しいケースに当てはまったのが美咲って訳か。 「そう。しかも美咲はその珍しいケースの中でも輪をかけて珍しい。ぶっちゃけて言えば、前例が無かった」 前例が無かった……? 「あぁ。過去にあったケースでは、どういう未練を残してきたのかを自覚していた。だが美咲の場合、自分がどういう未練を残してきたのかを、美咲自身が分かってなかったんだ」 うーん……。 美咲らしいと言えば美咲らしいな。
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