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「私としても対処に困ってな。未練が造作もないことなら現世へ突き返すが、人殺しとかだったら困るだろう?」
……確かに。
そんなんで殺されたら、被害者は救われないな。
「そこで!」
沙里奈は人さし指をビシッ!と俺に突き付けた。
「お前に白羽の矢が立った、という訳だ!」
心無しか楽しそうな沙里奈。
いや、はしゃぐところじゃないと思うんだけど……。
「私を成仏させた実績を持つお前なら、美咲の未練も晴らせるかも知れない。そう思った私は、美咲に『自分なりに何が心残りなのか考えておけ』と言い置いて、お前のところに送り込んだんだ。分かったか?」
……。
「いひゃい!?」
俺は沙里奈のほっぺを引っ張った。
すまん。これくらいのことはしないと、俺の気がおさまらない。
「な、何をするか!」
沙里奈はほっぺをさすっている。
若干涙目なのがいい。
「まったく、自分勝手なのも大概にしないとお兄さん怒るよ?」
「……迷惑だった?」
「そうじゃない」
俺は首を振った。
「誰か預けたいんなら一言連絡よこせって言ってんの。せっかくこんな力があるんだから。それからなら、いくらでも引き受けてやる」
もっとも、こいつの不安そうな顔を見たら「迷惑だ」なんて言える筈もない。
そんなことは夢にも思っちゃいないけどさ。
「……分かった。善処しよう」
沙里奈は間一髪でクラッシュ事故を避けたレーサーのような顔をした。
俺ってそんなに恐かったのか?
「しかしなぁ、もし美咲の未練が殺人とかだったら、どうするつもりだったんだ?」
美咲の様子を見るかぎりじゃ、未練は別のところにあるみたいだけど。
「その時は、私が狩る」
沙里奈は真摯な目で俺を見た。
「お前のことは私が守ってみせる。どんな手段を使ってもな」
真っすぐに俺を見つめる沙里奈。
その真剣な顔に、俺は釘づけになる。
「分かったら安心しろ」
破顔した表情もなかなか……って!
俺は何を考えている!?
「どうした?」
「なんでもねぇよ」
やばいやばい。
危うくやばいものに目覚めるところだった……。
「変な奴……」
変態な奴と言われなくてよかった。
……じゃなくて、沙里奈の真剣な気持ちは分かった。俺も応えなければならない。
死人にまで頼りにされるのは幸せなのか不幸なのか。
ま、ポジティブに考えていきましょ。
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