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「さてと。そろそろお前を下界に帰してやらないとな」
激しく賛成する。
いつまでもこんな所に居たら、マジで帰れなくなるかも知れない。
「そうだ。最後に一つ」
なんだ?
まだなにかあるのか?
「美咲に変なことをしてみろ。否応なしに『持ちかえる』からな?」
沙里奈は首にナイフを突き付けた暗殺者のような目で俺を見た。
「俺の理性と自制心は、ナパーム弾を受けようがバンカーバスターを喰らおうがイチローにレーザービームを撃ち込まれようが、未来永劫壊れることはない」
「本当だろうな?」
「お前が一番よく分かってるだろうが」
「……」
沙里奈は俺の顔をじぃーっと見つめた。
頭の中をスキャンされてるみたいだ。
嘘などつく訳があるまい。ついたらそれこそ命が無いぞ。
「……そうだな。お前にはそんな甲斐性がある筈がない」
断言するな。
「美咲のことをよろしく頼む。未練はそれ程無い筈だから」
「任されましょう」
どうせ用があったらまた幽体離脱させるんだろと言いたくなったが、後味を悪くしたらまずい。
大人しくすることにする。
「ちょっとしゃがんで」
片膝をつく。
沙里奈は俺の額に手をあてた。
……なんかアイアンクローされてるみたいだな。
「何ならこのまま頭蓋骨を砕いてやろうか?」
アホ抜かせ。
こんなとこで俺の味噌をぶちまけてたまるかよ。
「ま、用があればまたつれてくるから」
やっぱりかと思う間もなく、俺の意識は急降下するように落ちていった。
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