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「だ、大丈夫ですか!?」
駆け寄ってくる美咲を制し、ぶちまけたコーヒーを布巾で拭く。
派手にやっちまった。
「何なんだその格好は……?」
そう。
俺がコーヒーをぶちまけた理由は、美咲の服装にあった。
白いエプロンに同じく白のストッキング。裾の広がったフレアスカート。ブラウスのツーピース。それとカチューシャ。
どこからどう見てもメイド服なのである。
「メイド服は嫌いですか?」
美咲はちょこんと首を傾げながら訊いてきた。
好きか嫌いかと言われれば正直前者だが、この際そんなことはどうでもいい。
問題はなぜそんな格好をしているかだ。
この子、そういう趣味があるんじゃないだろうな?
「えぇっと……。朝起きたらこの服と『これを着たら悠二は喜ぶ』っていう、大天使様からの置き手紙がありまして……」
要するにあいつが仕向けた訳だな。
いたいけな少女になんて真似をしやがる……。
「……着替えてきなさい」
「えっ?」
目の保養にはなるが、保養のしすぎもかえって毒になる。
イチローのレーザービームにも耐えられる俺の理性だが、メイド耐性はない。
「気に入って頂けませんでしたか?」
今にも泣きだしそうな声の美咲。
いや、そういう問題じゃなくてだな……。
「嫌いではない。だが、普通の格好で居てほしいというのが正直な感想だ」
「……分かりましたぁ」
なんでそんな悲しそうな顔をするんだ、と思っている間に、美咲は二階へと上がっていった。
正直なところは今言った通りだが、もうちょっと見ていたかったのも事実だ。
あの格好で「ご主人様」なんて言われた日にゃあ……。
い、いかん!
俺のビートが上昇してきた!
まったく……。
美咲に変なことをするなと言っておきながら、本当はさせることを狙ってるんじゃないだろうな?
お前は何をさせたいんだ?
沙里奈。
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