fourth call

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「だ、大丈夫ですか!?」 駆け寄ってくる美咲を制し、ぶちまけたコーヒーを布巾で拭く。 派手にやっちまった。 「何なんだその格好は……?」 そう。 俺がコーヒーをぶちまけた理由は、美咲の服装にあった。 白いエプロンに同じく白のストッキング。裾の広がったフレアスカート。ブラウスのツーピース。それとカチューシャ。 どこからどう見てもメイド服なのである。 「メイド服は嫌いですか?」 美咲はちょこんと首を傾げながら訊いてきた。 好きか嫌いかと言われれば正直前者だが、この際そんなことはどうでもいい。 問題はなぜそんな格好をしているかだ。 この子、そういう趣味があるんじゃないだろうな? 「えぇっと……。朝起きたらこの服と『これを着たら悠二は喜ぶ』っていう、大天使様からの置き手紙がありまして……」 要するにあいつが仕向けた訳だな。 いたいけな少女になんて真似をしやがる……。 「……着替えてきなさい」 「えっ?」 目の保養にはなるが、保養のしすぎもかえって毒になる。 イチローのレーザービームにも耐えられる俺の理性だが、メイド耐性はない。 「気に入って頂けませんでしたか?」 今にも泣きだしそうな声の美咲。 いや、そういう問題じゃなくてだな……。 「嫌いではない。だが、普通の格好で居てほしいというのが正直な感想だ」 「……分かりましたぁ」 なんでそんな悲しそうな顔をするんだ、と思っている間に、美咲は二階へと上がっていった。 正直なところは今言った通りだが、もうちょっと見ていたかったのも事実だ。 あの格好で「ご主人様」なんて言われた日にゃあ……。 い、いかん! 俺のビートが上昇してきた! まったく……。 美咲に変なことをするなと言っておきながら、本当はさせることを狙ってるんじゃないだろうな? お前は何をさせたいんだ? 沙里奈。
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