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「はぁ……はぁ……」
炎天下の中の山道を俺は歩いている。その足取りは、果てしなく重い。
まるで足に土嚢でも縛り付けられてるみたいだ。
我ながらこんなに体力が無かったとは……。
「悠二さーん!早くー!」
遥か前方で俺を呼ぶ美咲。
環境が発育や性格に影響を与えると言うならば、ここで暮らすことは絶対に良い方向に傾くだろう。
山のように大らかな性格。
澄んだ川のように清らかな心。
美咲のような可愛く素直な子が育つな。きっと。
だが、ここで暮らせと言われたら、俺は否と答える。
文明の利器に慣れてしまった人間は、一昔前の生活なんて出来ないのだよ。
「もぅ。遅いですよー」
汗一つかいていない美咲。
俺はダラダラだぞ。シャツを搾って雑巾がけしてもお釣りが来そうだ。
くそ。
こういう清純派キャラは、汗をかかないのか?
「す、少し休ませてくれ……」
その華奢な体のどこにそんな体力があるんだ?
圧縮袋にでも詰まっているのか?
「あともう少しですから、頑張ってください」
美咲は俺の腕を引っ張った。
どうやら休ませる気は無いようだな……。
しかし、あんなワクワク顔を見たら無理に休ませてと言う訳にもいくまい。
へタレとか言ってくれるなよ?
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