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「着きました。ここですよ」
一体どれくらい歩いたのだろう。
そろそろガソリンスタンドに入って給油しなければと思った時、不意に美咲が足を止めた。
「ここが……お前の家か?」
「えぇ。そうです」
「……」
俺の目の前には、デーンと構えた立派な門がある。
その奥にはさらに立派なお堂がデーンと構えていて、全体的に見ればデーンと構えた立派な寺ということか。
……自分で言ってて訳分からん。
「お寺の娘さんだったのか……」
「はい!写経もバッチリ出来ますよ!」
いや、そんな得意気に言われても反応に困る。
「驚きましたか?」
「正直な。よく出来た娘っ子だとは思っていたが」
「親の躾の賜物ですねぇ。やっぱり感謝しないと」
美咲は腕を組んでウンウン頷いている。
そんなに厳しいのか。坊さんの躾と言うのは。
「父親の性格かも知れませんねぇ。礼儀作法から何から徹底的に叩き込まれました」
そんな娘がハーゲ〇ダッツを十個も食いたがるのか?どうでもいいが。
つーか自分の娘も成仏させられない坊さんってのはどうなのよ?
何か問題ありゃしないか?
「さ、ちょっと入りましょ」
美咲は俺の腕を引っ張った。
「おいおい、そっちは住居の方だろ?勝手に入っていいのか?」
「ご心配なく。私の家ですから!」
そりゃそうだがな、お前は一回死んでるんだ。死んだ娘が帰ってきたなんて言ったら、ここを総本山とする新興宗教が出来るかも知れないぞ?
「大丈夫ですって!お父さんなら、今頃はパチンコですから!」
煩悩を捨てろよ坊さん。
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