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しかしまぁ、美咲の親父さんはどんだけの財産を残しているのかと、無駄にでかい家だと思ったね。
「庭の枯山水も全然変わってない……」
と美咲嬢も言っているように、この家には枯山水なんてものがあったりする。それはそれで風流で趣もあるのだが、一介の庶民である俺の目には何だか嫌味に似たものを感じたり感じなかったりする訳で。
これが格差社会なのかと馬鹿なことを考えてみたり。
要するに暇なのだ。
いやね、人ん家の玄関先ではしゃいでいる少女を木陰に腰掛けて見守っているだけってのもどうかと思うけど、美咲が嬉しそうにしているのを止めるのもかわいそうだろう?
……というのは建前で、本音を言わせてもらえばきょろきょろとせわしなく動いている美咲を見てHP及びMPを回復してるだけなんだけどね。
まったく。
男の体ってのはホントに簡単な造りをしているよ。
「もぅ。いつまで休んでるですかー?」
美咲が寄ってきた。
不満そうな顔をしている。
「二十歳の男が人ん家ではしゃぐのもどうかと思うぞ?」
「いいじゃないですか。私の家なんだから」
だからお前は死んでいると――
「あら?どちら様かしら?」
……。
美咲の後ろから女性の声が。
「きゃっ!!」
美咲が驚いて横に跳ねた。
そこに立っていたのは、柔和そうな女性だった。
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