fourth call

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「お騒がせしました。ちょっとパニックを起こしただけみたいです」 部屋に戻ってみると、奥さんが心配そうな面持ちで待っていた。 「妹さん大丈夫?部屋は沢山あるから、寝かせてあげてもいいのよ?」 「大丈夫です。今日は車で来てましてね。乗せて寝かせてきましたから」 無論嘘だが、この場合の嘘は許されてもいいだろう。 こっちも一杯一杯なんだから。 「そう……」 奥さんはまだ悲しそうな顔をしている。 「どうかしましたか?」 「いいえ。ちょっと娘のことを思い出しちゃってね……」 奥さんは自分の湯呑みを見つめた。 「我が家は躾が厳しくて、お稽古事とかもけっこうやらせていたから、キツイことを言っちゃうこともあったし……。もしかしたら、私はひどいことをしていたんじゃないかって」 「奥さん、それは違いますよ」 「えっ?」 俺は湯呑みのお茶を一口飲んだ。 「躾だって稽古だって、みんな美咲さんを思ってやったことでしょう?美咲さんは分かっていたと思いますよ?奥さんの気持ち」 俺は続ける。 「親子なんだから衝突することがあるのは当然です。でも、それを悔やんでどうなるんです?美咲さんは帰ってくるんですか?」 「……手厳しいわね」 奥さんは苦笑いを浮かべた。 「あなたも自分の子を持つようになれば分かるわよ。私の気持ちが」 「奥さん」 俺は残っていたお茶をぐいっと飲み干した。 冷めてもなお美味いのは、お茶を煎れるのが上手いのか。 ダジャレじゃないぞ? 「分かってないなぁ。トドメの一撃、あげましょうか」 「えっ?」 奥さんのキョトンとした顔を暫し見つめて、 「あの子は言ってました。俺がどんな両親なの?と訊いた時は『優しいですよ。二人とも』って。よく出来た子だねって言った時は『親の躾の賜物ですねぇ。やっぱり感謝しないと』って。本当に嫌いだったら、こんなこと言えますか?」
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