fourth call

18/20

10410人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
山の夕暮れってのは、すんげぇもんだなぁと俺は思った。 遠くのお山に日が沈み、空が真っ赤に染まる頃。カラスが家路を急ぐ声も聞こえる。 夕焼けがいつもより綺麗に見えるのは、空気が澄んでいるからだろうか? 「自分のお墓を見るのは何だか不思議な気分ですね」 美咲がぽつりと呟いた。 ここは橘家から少し登った所にある、小さな墓地だ。位置はお寺の丁度上くらいか。 多分、美咲の両親が管理している墓地なのだろう。 「お花もちゃんとあるし……。お母さんかな?毎日来てくれてるのは」 黒い墓石の真ん中には「橘家」ときっちりと彫られている。 比較的新しいところを見ると、つい最近作られたものだろうか。 両端にある花瓶には、色とりどりの花が飾られている。 「結局、私は忘れられちゃったのでしょうか?」 しゃがんで自分の墓石を撫でながら、美咲は言った。 「お母さんが言ってましたよね?三ヵ月も経ったら家を訪ねてくる友達は居ないって。何だか寂しい気がします」 その顔は、泣くのを我慢しているような、すごく切ない笑みを浮かべていた。 「それは違う。誰も美咲のこと、忘れちゃいないさ」 「え?」 俺は美咲の隣にしゃがんだ。 「みんな忘れた訳じゃない。お前の死を、しっかりと受け入れただけさ」 風がひと吹き。 花瓶の花をゆらした。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10410人が本棚に入れています
本棚に追加