fourth call

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「俺も爺ちゃんを亡くした身だから分かるけどな、人の死ってのはそう簡単に受け入れられるもんじゃない。まして忘れるなんて、一生かかっても無理な話だ」 爺ちゃんが死んだと親から教えられた日、俺は呆然として、涙が出なかった。 爺ちゃんの冷たい肌に触れた時も、涙は出なかった。火葬の時も、葬式の時も。 全てのことが終わって家に帰ってきて、初めて爺ちゃんが居なくなったことを理解した。それで初めて、涙が出た。 それから一週間くらい、食事も喉を通らなかった気がする。 「お?ちょっと見てみろよ」 俺は花束に一枚の便箋が紐で結ばれているのを見つけた。 「これは……」 美咲が見やすいように角度を変える。 便箋には丸っこい字で、学校での出来事や流行りの歌、担任への悪口なんかが書いてあった。締めにはプリクラが貼ってある。 おそらく美咲の友達だろう。 「いい友達じゃないか。花を手向けるだけじゃなく、手紙までよこしてくれている。これでも忘れられてるなんて言えるか?」 「……いいえ」 「だろうな」 俺は便箋の紐をほどいた。 「持ってけ。これさえ持ってりゃ、寂しいことなんてないさ」 「……はい」 美咲は手紙をしっかりと受け取り、いとおしそうに胸まで持っていった。 「私は、幸せ者だったんですね」 遅いよ。気付くのが。 「よし。そろそろ帰ろうか」 「はい」 二人で同時に立ち上がる。 「すっかり遅くなっちまったな。夕飯はどうし――」 とす、と胸に何かが飛び込んできた。 「……美咲?」 「ごめんなさい……。少しだけ……少しだけ甘えさせて下さい……」 シャツ越しに、熱いものが伝わってくる。 「……分かった」 「う……うぇ……」 嗚咽。 抱き締めてやりたいという衝動もあったが、自制した。 代わりに空を見上げる。 月はまだ、顔を出していなかった。
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