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一人で自問自答して若干落ち込みつつ居間の扇風機に向かって「あー」ってやっていると、ポツリポツリと水滴が屋根を叩く音が聞こえてきた。
どうやら雨が降り始めたらしい。
その音はポツリポツリからポツポツになり、瞬く間にドバー!という音に変わった。いわゆる夕立というやつだ。
「降りだしたか……」
夕立は夏の風物詩。
突然来て豪快に降って潔く去っていく。
まさにそんな感じ。
高校時代は大変だったな。
授業中は普通に晴れているのに段々と曇ってきて、帰る頃にはドシャ降りになっている。「さっきまであんなに晴れていたのに!」と、某魔法使い少女的な台詞を残した回数は、両手の指だけじゃ数えきれない。
「麦茶でも飲むか」
いい加減、扇風機に向かって「あー」ってやるのも飽きてきた。
大学生にもなって何やってんだよ、と思うだろ?
人間暇だとな、普段やらないことでもやって時間を潰すしかないんだよ。
「よいしょっと」
台所に向かおうと立ち上がった時、
ジリリリリリリ!ジリリリリリリ!
不意に携帯が鳴った。
ちなみに何でこんな着信音かというと、もともと入ってた「黒電話」というやつに設定しているからだ。
そこ、笑っていいぞ?
「非通知設定……?」
携帯の画面にはそう表示されている。
非通知ってことは公衆電話だよな?俺の番号を知っている人間ならば、わざわざやるような人間は一人しか居ない。あえて名前は挙げないが。
それとも、インドネシアの親か?わざわざ国際電話を掛けてる必要もないと思うけど。
とにかく、出ない訳にはいかないな。
俺は電話を耳にあてた。
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