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「ったく。俺としたことが、何たる不覚だよ」
どっかりと腰を下ろす。
「ま、他人事でも真剣になれるのが、お前の良い所でもあるんだけどな」
沙里奈もちょこんと腰を下ろした。
「あーあ。変な空気になっちまったな」
「まったくだ。誰のせい?」
「もう一人の俺、かな?」
「なんだそりゃ?」
二人でクスクスと笑う。
穏やかな風が吹き抜けた。
「さてと。そろそろお前を帰してやるか」
おお。
そうしてもらえると俺も助かる。
「美咲の未練もあと一つ。可能な限り手助けしてやってくれ」
「大船なんて大風呂敷は広げない。カヌーか何かに乗ったつもりでいろ」
ついでに注文も申し添えておく。
「あとな、今日の電車賃で俺の財布には冬将軍が早くも到来しちまったんだ。何とかならないか?」
「必要経費ってことで申請しておこう。明日あたり、口座を確認しておいてくれ」
さすが、分かっていらっしゃる。くれぐれも円で頼むぜ?インドルピーとか振込まれても使えないからな。
「天界に限ってそんなヘマはしない。我が神と私を信用しろ」
沙里奈は俺の頭に手を置いた。
「ん?今日はアイアンクローじゃないのか?」
「何なら変えてやってもいいが?」
そりゃ勘弁。
「じゃあな。用があったらまた連れて来るから」
どうせ用が無くても連れて来るんだろ。
と言う暇もなく、俺の意識は急降下していった。
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