sixth call

2/12
前へ
/85ページ
次へ
「どう?似合ってますか?」 「うん。よく似合ってる」 「そうですか。良かったぁ」 嬉しそうな美咲。 美咲が纏っているのは、露草色の地に花火の柄の浴衣。昼間、一緒に服屋に出向いて買ってきたものだ。 うん。 俺の見立ては間違っていなかったな。 「えへへ。夏祭りなんて久しぶりです」 状況は説明しなくても分かるよな? 俺が美咲を誘ったんだよ。夏祭りに。 拒否されたらどうしようかと思ったけど、快く了承してくれた。 ちなみに美咲が着ている浴衣、実は結構値が張っている。 諭吉さんが二人か三人くらいだったかな?よく覚えてないけど。 なんで俺がそんな大盤振舞を出来たのかと言うと、全ては沙里奈のお陰なんだよな。 浴衣を買いに行く時に銀行に寄って金を下ろしたんだが、残高を見て驚いた。具体的な金額はお教え出来ないが、慎ましく暮らせば一生働かないで生活出来る金額とだけ言っておこう。 「税金についても問題ない」というメモも通帳に挟んであった。 必要経費としては些か多い気もするが、まぁいいだろう。 どちらにせよ、堕落した生活をしようものなら問答無用でお持ち帰りされるのだから。 「どれ。そろそろ行くか」 時計の針は五時半を指している。祭の開始は六時だから、ゆっくり歩いても十分間に合うな。 「はい!」 大きく頷く美咲。 その拍子に、ポニーテールに結われた髪がふわりとなびいた。 「あんまり似合いませんよ」と本人は言っていたが、なかなかどうして。 いつものツインテールもいいけど、浴衣にポニーテールなんて金棒持った鬼も裸足で逃げ出す最強の組み合わせだぞ? 「なにぼーっとしてるんですか?」 「いや。何でもない」 さてさて。惚けるのもこのくらいにして、ちゃっちゃと出るとしますか。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10410人が本棚に入れています
本棚に追加