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皆神神社までは、まだまだけっこうな距離がある。
そこまで屋台の列が続いていると考えると、この祭にかける店主の意気込みというのが、何だか分かるような分からないような。
需要があれば供給があり、供給があれば需要がある。それと同じように、客が居れば屋台が出て、屋台があれば客が寄ってくる。
こんな祭にも経済の原理がしっかりと働いているんだな。
まったく。
世の中ってのは本当によく出来ている。
「あっ、可愛いぬいぐるみ」
射的屋の屋台の前で、美咲が足を止めた。
「うん?」
……なるほど。
右端のクマのぬいぐるみか。
「いいですよねぇ、ああいうの。ぎゅーってしたら気持ち良さそう」
何やら目を細めてぬいぐるみを見つめている。
いくら大食らいと言っても、こういうところは女の子か。
や、今のは失礼な発言だったな。
「取ってやろうか?」
けっこうな大きさがあるが、取れない大きさではないな。
「えっ!?取れるんですか!?」
信じられない、という顔をしているな。
ふふふ……。これでも俺は射的の腕は大したものでね、谷口から『デューク豊口』なんて異名を付けられちまったぐらいなのさ。
ひどい異名だろう?
だから普段は決して自分の口からは言わないようにしている。
「まぁ見てろって」
屋台のおっちゃんに金を払い、銃と玉を貰った。
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