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「もしもし」
『私メリーさん。今、綾坂駅に居るの』
電話の相手は、どう考えても女だった。名前はメリーというらしい。
……誰?
「どちら様?」
ブッ
俺が問うと、相手は答えずに電話を切った。
メリーさん……とか言ったか。少なくとも俺には、そんな名前の友達は居ない。
さらに不可解なのは、なぜか居場所を告げてきたことだ。
綾坂駅は俺の家から車で三十分ぐらいの場所にある駅。新幹線も停まるそこそこ大きな駅だが、生憎知り合いは居ない。
悪戯電話か?
ジリリリリリリ!ジリリリリリリ!
また着信……。まさかさっきの奴じゃないだろうな?
「もしもし」
『私メリーさん。今、もちの木商店街に居るの』
そのまさかかよ……。
「おい。あんた誰」
ブッ
また切りやがった。
もちの木商店街といえば、駅から少し離れた場所にある。移動しているのか?
ジリリリリリリ!ジリリリリリリ!
また電話……。
ほんと、何なんだよ。
「もしもし?」
『私メリーさん。今、遠野総合病院に居るの』
「お前さぁ、悪戯なら他あた」
ブッ
……。
まぁ、予想はしていたさ。
今度は遠野総合病院。
もちの木商店街からさらに移動したな。
ん?ちょっと待てよ?
綾坂駅、もちの木商店街、遠野総合病院……。俺の家からは、車で三十分、二十五分、十五分の場所にある。
こっちに近づいてきているのか……?
というか、移動速度が速過ぎる。綾坂駅からもちの木商店街までは車で五分。その距離を、メリーとかいう奴は一分とかからず移動している。さらに、もちの木商店街から遠野総合病院。こっちはほんの一瞬だ。
どうなっていやがる……。
雨の音が、やけに耳に障る気がした。
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