sixth call

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夏の夜空を彩る大輪。 それはヒマワリのような力強さと、桜のようなはかなさを併せ持つ、不思議な存在。 日本人でよかった。誰もがそう思わざるを得ない。 花火はそういうものなのだと俺は思う。 「綺麗……」 美咲が感嘆の声を漏らす。 「だろ?これを肴にラムネを飲むってのも、なかなか乙なもんだ」 「ふふっ。悠二さん、何だか親父っぽいです」 「うっせ」 花火を見るのに絶好の場所。それはずばり、我が家のベランダだ。 我が家が小高い丘の上に建っているのは周知の通り。そのベランダからの眺めは、言わなくても分かるだろう? 皆神川はここからだと少し西の方にある。そこから打ち上げられる花火を、人混みに紛れ込まず、かつ無料で楽しめるんだ。 うちの親が何でこんな所に家を建てたのか。今なら分かる気がするな。 「ホント、引き受けてくれたのが悠二さんで良かったな」 美咲がぽつりと呟く。 「もし怖い人だったらどうしようって、ずっと考えていたんですよ?」 少し照れ臭そうに笑う。 「でも、実際は優しい人で、ホントに良かったです」 「……まぁ、困った時はお互い様だから」 面と向かってそんなこと言われると、何だかすっごく恥ずかしいぞ。 「そういえばさ」 とりあえず話題を変える。 「最後の未練って一体何なんだ?」 結局、今日は一日その話題には触れなかった訳だが、やはり気になる。 美咲が最後まで取っておいた未練。それほど大事なものなのか? 「えっと……。そうですね」 美咲は皆神川の方に視線を向ける。 つられるように俺も見る。 今は花火の方は一段落しているようだ。 「今すぐにでも晴らせられる未練、かな?」 「へぇ」 そりゃあいい。 せっかくだ。 この場で晴らせよう。 「で、それは一体?」 「えと……その……」 美咲は何だか言うのを迷っているみたいだ。 まずいことを訊いちまったか? 「や、言いたくなかったら明日や明後日でも構わない。そんなに焦らなくてもよかったな」 「……いえ。私の方も、決心出来た気がします」 美咲がこちらを向く。 「驚かないで聞いてくださいね?」 「あぁ。分かった」 俺は皆神川の方を向いたまま、ラムネを呷る。 「……私のファーストキスを、貰って下さい」 「ぶはっ!!」 俺はラムネを思いっきり吹いた。
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