sixth call

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「げほっ!げほっ!」 ちょっと待て。 落ち着け。 今なんて言った? 私のファーストキスを貰って下さい。 俺の記憶が正しければ、美咲は確かにそう言った。 何を考えているんだ? 「お前……。自分が何を言っているのか分かっているのか!?」 「はい。ちゃんと分かっていますよ」 美咲は穏やかな顔をしていた。 「馬鹿野郎!そんなこと軽々しく口にするもんじゃ――」 「単刀直入に言います」 美咲が俺の言葉を遮る。 「私は、あなたのことが好きです」 「な……!」 二の句が継げない。 「好きな人にファーストキスを貰ってほしいと願うのは、いけないことですか?」 美咲は少し、悲しそうな顔をした。 「私はこの世に帰ってきて、正直不安でした。果たして本当に成仏なんて出来るのか。もしかしたら、この世をずっと彷徨うことになるんじゃないかって、不安で押し潰されそうでした」 「……」 「そんな私を支えてくれたのは、悠二さん、あなたです。あなたは人間ではない私に優しくしてくれて、我儘も聞いてくれて、遊びにまで連れていってくれました。そんな人にファーストキスを貰ってほしいと願うのは、いけないことですか?」 ……畜生。 なんか言えよ。俺。
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