sixth call

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「そろそろ、おいとましないといけませんね」 「ん。そうか」 いよいよこの時が来たか。 楽しい時間というものは、あっという間に過ぎてしまうものだ。 「あなたと出会えて、本当に良かった。ありがとう。悠二さん」 「馬鹿。泣くんじゃねぇよ」 俺は美咲の目元を拭った。 「泣いてさよならなんて悲しすぎるだろ?ほら、笑顔笑顔」 「……はい」 美咲はにっこりと笑ってくれた。 ……あぁ。 俺の涙腺も弱くなったな。 今にも決壊しそうだ。 「あっ、そうだ」 ポンと手を叩く美咲。 「悠二さん、ちょっと後ろ向いてもらえますか?」 「ん?どうして?」 「いいから」 ……まぁ、別段断る理由もなし。 大人しく従うとしよう。 「これでいいか?」 「はい」 背後から美咲の声。 断る理由は無いが、何が目的なのかはやっぱり気になる。 「おい美咲。一体何をするん――」 だ、と言い掛けた時、何かが砕ける音とともに後頭部に衝撃が走った。 「がっ!!」 目の前がチカチカする。 意識が遠退く。 美咲の奴、一体何を……。 「ごめんなさい。私が消える姿は、大好きな人には見せられません。だからほんの少しの間、眠っていて下さい」 体から離れようとする意識を何とか繋ぎとめ、後ろを見る。 頬に涙の跡を残しながらも、にっこりと笑っている美咲。 その手には、割れたラムネの瓶。 「お前……。ラムネの瓶で殴――」 そこが俺の限界だった。
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